大判例

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大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)2284号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(証拠)を総合すると、本件建物は昭和一四年頃建築されたものであるところ、建売住宅で粗末な資材が使用されているなどのため建築年度の割に老朽化の程度が著しく、昭和三六年一二月当時すでに柱の一部に折損があり、腐飾汚染等の部分も多く、建物自体及びその内部の各所に多少の傾斜を生じ、柱とふすまの間隔が十糎も開いている箇所も存在し、早晩改築の必要のあることが認められる。そして原告は右の事情から本件建物の改築の必要性を強調し、これをもつて本件解約の正当事由とするのであるが、<証拠>によると本件建物は今直ちに倒壊の危険があり早急に改築の必要があるとまでは認められず、むしろ本件建物程度の家屋は世上いくらも存在し住居として使用されている事実が認められる。ところで原告は右建物の改築を理由としてその明渡を求める以上原告に右改築の意思があり且つその計画もある程度具体化されていることを要することは当然であり、単に建物が老朽化しているというだけでは明渡を求める正当の事由とすることはできないものと解すべきところ、<証拠>を総合すると、原告は本件解約申入当時これを改築する資力もなく改築について具体的な計画ももたず、被告等より本件建物の明渡を受けても直ちにその改築に着手し得るような状況にはなかつた事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。そして現在においては原告はも早やこれを改築する意思すらもたないことは原告本人の供述によつても明らかである。そうすると本件解約の申入に正当の事由を認めることはできないものといわねばならない。

もつとも建物の賃貸人は賃借人の建物使用に必要な修理をなすべき義務がある結果、建物の老朽化が甚しい場合には、その修理費用が嵩み(もつとも建物の耐用年数が尽きたような場合においては、賃貸人は賃借人の要求があつてもこれに大改造を施してその延長を計るべき義務はなく、かかる大修理はここにいう修理には当らず、したがつてかかる修理費は賃貸人に負担させることはできない)賃借人より支払を受ける賃料と権衡を失するに至る場合があり、かかる場合にも賃貸借の継続を強制することは衡平の原則にも背馳するから、解約につき正当の事由を肯認し得る場合もあり得るが、本件の場合かかる事情の存在についての立証はない。

そうすると本件解約の申入には正当の事由の存在を肯認することはできないから、原告のした前記解約の申入は効力を有しないものというべきである。(谷野英俊)

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